トップページ > ニュース > 学会賞 > bestpr-2018 > 最優秀発表賞選考経過の講評
選考委員会委員 田中 智(宇宙科学研究所)
今年度は12名の応募があり、資格審査及び予稿に対する予備審査の結果、資格を満たしていない2名を除いた、10名を本審査対象としました。審査員は惑星科学において専門分野の異なる8名が行いました。発表日同日に開催した選考委員会および運営委員会において慎重に審議した結果,2018年度最優秀発表賞受賞者は冨永遼祐さん(名古屋大学,講演タイトル「原始惑星系円盤中のダスト乱流拡散の再定式化と散逸が駆動する不安定性による多重リング形成」)とすることを決定しました
富永さんはダスト多重リングの存在に関して、重力不安定性に起因した観点についての理論的、解析的な研究成果を明確に示されました。これまでの定式化の物理的な不備を明確にした上でその問題点の本質的な部分を解決し、この理論をより普遍的なものに強化したことから科学的意義は非常に高いと評価しました。問題設定、および物理的な説明が明確で説得力が高いものでした。質疑応答について想定問答用のスライドを別途準備されていたなど、準備も周到でした。口頭発表については、一部の審査員では十分理解できなかったとの指摘もありましたが、ポスター発表と併せて概ねわかりやすい発表でした。さらに専門的な質問についても的確な回答であったことも高評価でした。ALMAでの観測との比較例をもっと提示していただきたかったという意見もありました。
総評:いずれの研究も時間と努力を非常にかけられたものであり惑星科学への貢献は大きいと高く評価しました。また、全ての発表において研究成果を順序立てて整理し、分かりやすく説明するよう努力されていました。しかしながら、 発表において研究の惑星科学としての意義•重要性についての主張が少ないもの、得られた成果に対して独創性のアピールが今ひとつ伝わらなかったものも多く見受けられました。また、 アブストラクトにおいても、研究成果が明確に記述されていないものが散見されました。アブストラクトも科学的重要性と研究成果を端的に主張できる重要なものですので推敲を重ねて示していただければと思います。 なお、本年度においては、希望者に対して各審査員の講評コメントをお送りしました。
来年度以降も,多くの学生会員からの応募を歓迎します。